皆さんも気になっていたと思われます、首からかけるタイプのウイルス対策用の薬剤が、景品表示法のうち「優良誤認(同法第五条第一号)」に当たるとして、2020年8月28日に消費者庁より措置命令が行われました。
この「ウイルスシャットアウト」という製品を販売供給していたのは、株式会社東亜産業という会社で、消費者庁とはデータに対する見解が異なるとして、争う姿勢を見せています。
それでは、この製品は本当に効果があるのでしょうか?解放空間において、微生物(細菌・カビ・ウイルスなど)に対しての薬効を測定するのは困難を極めます。そもそも測定条件が一定にはならないからです。温度、湿度、風速など様々な測定条件の変化によって、結果は異なります。もし、私がこの製品担当者だったら、密閉空間でデータ測定を行い、そのデータを「密閉空間で測定したデータです」と但し書きをした上で販促資料として使用するようにしたと思います。
さらにもう3つ重要な事項があります。1つ目。効果を発揮する主剤として使用されている「二酸化塩素」ですが、薬剤としては「細菌」や「ウイルス」への効果は認められています。ただし、「二酸化塩素ガス」としては有効濃度、残存時間、安全性などの確認が取られていないことが多くあります。リンク先は、国民生活センターの調査資料ですが参考になると思います。
2つ目。高校時代の化学で習った「スイヘーリーベボクノフネ」まだ覚えていますか?そうです、「元素記号」です。「二酸化塩素」は「ClO2」となり、分子量は「67.45」となります。一方で大気の組成は、78%が「窒素」で「N2」分子量は「28」です。21%は「酸素」で「O2」分子量は「32」です。残りの1%は様々な物質が含まれていますが、今回は無視して、これを「空気の分子量」として平均化してあげましょう。そうすると約「28.85」となります。
以上の計算より常識的に考えて、「二酸化塩素」は「空気」の2倍以上重い事が分かります。噴霧装置でもない限り、発生した「二酸化塩素ガス」は装着している場所から下へと発生し続けるだけということになります。ただ吊り下げるだけの薬剤で、「半径1mの空間の除菌」と効果を謳うことは、あまりにも効果を過剰に宣伝していると考えます。もし仮に本当にこの薬剤に効果があったとしても、「細菌」や「ウイルス」を不活化するだけで、空間から取り除くことは不可能です。そんな機能は、この薬剤には付いていません。
3つ目。菌やウイルスが感染する可能性が最も高いのは、「咽頭(のど)」や「鼻腔(鼻の中)」となります。手指の消毒が推奨されるのは、人間は無意識で顔を触る癖があり、気が付かない間に(10回/1日程度も)触っているからと、気が付かないうちに何かを触っているからです。空間に手をかけるよりも、「手指の洗浄消毒」や「マスク着用」の方が効果が高いのは明白です。
以上の観点より、該当製品については私も消費者庁と同見解です。効果が全くないとは言いませんが、上記内容を理解したうえで購入するようにしてください。