高校の生物の授業で習った、生物の「三原則」を覚えていますか?①代謝②自己複製③恒常性の3つです。
「代謝」とは、生命を維持するために行われる化学反応全般のことです。動物であれば、食事や排泄などが主なものとなります。
「自己複製」とは、細胞が分裂することによって自身と同じ細胞を作り出すことです。動物であれば、ケガをした際に傷口がふさがるのは、この「自己複製」能力のおかげです。
「恒常性」とは、生命であればその状態を維持するために、体温やホルモンバランス、免疫システムなどを一定の状態に保つこと(つまり、自分の身体を健康な状態に保っておくこと)です。
ちなみに、細菌やカビ・酵母などの微生物は、生物の「三原則」を全て満たしています。パンにカビが生えるのも、直飲みしたペットボトル飲料が(いつの間にか)腐るのも、生乾きの洗濯物が臭くなるのも、お酒や味噌や醤油が出来るのも、全て微生物の生命活動によるものです。
この三原則を満たしていれば「生物」と言えるのですが、実は「ウイルス」はこの「三原則」には当てはまりません。なので、現在でも「ウイルス」は生物なのか、非生物なのか、専門家の間でも議論になっています。
「ウイルス」は、単独では「自己複製」できませんが、他の生物の細胞内に入り込むことによって「自己複製」することが可能で、宿主となった生物の「代謝」や「恒常性」に大きな影響を与えます。
「ウイルス」は、エネルギーの生産・代謝活動も「ウイルス」自身のみで行うことはできません。「自己複製」する際に必要なエネルギーは、宿主から略奪することにより成り立っています。
唯一保有しているのが、「自己複製」能力です。ただし、非常に原始的で単純な構造なので、条件さえ整えば、数年から数百年、場合によっては数千年に渡って「自己複製」能力が保たれることもあります。
その構造は、「核酸(DNAまたはRNA)」の周りをタンパク質の「膜(capsid・カプシド)」が取り囲んでいるといった構造です。ニワトリの玉子を想像してみてください。「黄身」に当たるのが「核酸」で、「カプシド」に当たるのが「白身」です。この白身の外側に、「タンパク質」と「脂質」を含む「二重膜」があり「エンベロープ」と呼ばれます。これが卵の「殻」に当たります。この「二重膜」を持っている「ウイルス」は「エンベロープウイルス」といい、持っていない「ウイルス」は「ノンエンベロープウイルス」といいます。
今話題の「コロナウイルス」は、「エンベロープウイルス」です。「エンベロープウイルス」は、「アルコール」によりダメージを受けやすいという特徴があります。外側に膜があるから強そうですが、その膜の成分は「タンパク質」と「脂質」を含んでいます。ご存知のように、「タンパク質」は「アルコール」によって変性しますし、「脂質」は「アルコール」によって溶解します。
「ウイルス」においては、「エンベロープウイルス」の方が「ノンエンベロープウイルス」よりも「アルコール」などの消毒用薬剤によるダメージを受けやすいとされています。「アルコール」以外の消毒用薬剤や、「脂質」を洗い流す「石鹸・洗剤」なども同様とされています。
「ウイルス」は難しいことが多いので、今回はここまでにしましょうね。